POEMS症候群の治療について

POEMS症候群に対しては、近年研究が進展し、いくつかの治療方法が示されています。現状では、患者数が少ないことから、標準的な治療方法の確立には至っていませんが、これは治療方法が存在しないという意味ではありません。患者個人の病状に応じた治療方法が選択されています。POEMS症候群サポー トグループの会員にも、治療により症状が改善し、健康な状態を長期間保っている方が多くいます。

ここでは、POEMS症候群の治療に関する情報として、代表的な治療方法や、治験情報などについて紹介します。

POEMS症候群の治療では、この病気の原因である形質細胞の腫瘍自体、または、これに伴って大量に発生しているVEGFを抑えることがターゲットとなります。現在までに採用されている主な治療方法を以下に紹介します。実際には、これらの治療方法を選択、または組み合わせて治療にあたります。

治療法概要
放射線治療・病変切除形質細胞腫の病変(骨硬化性病変)が1か所に限られるなど限定的であれば、その部分の切除や、放射線治療により対応します。限定的であることの確証がない、複数の病変がある場合は以降の治療法が選択されます。
MP療法抗がん剤のメルファランとステロイドのプレドニゾロン(プレドニン)を服用する治療法です。形質細胞の腫瘍が原因の病気であるため、抗がん剤による治療として、1990年代から採用されてきました。
血漿交換療法値血液中(血漿中)から、有害となる物質を除去する治療方法です。
ステロイドを併用して治療することが多くあります。
血液中から有害物質を狙って取り除くことで、早期に症状を軽快させることが期待されます。
自己末梢血幹細胞移植抗がん剤(メルファラン)を大量投与することで腫瘍を破壊する治療法です。
この方法では、血液を作る骨髄の機能にも大きなダメージがあるため、自分自身の造血幹細胞(血液の様々な細胞を作るもととなる細胞)をあらかじめ保存しておき、治療後に、体内に戻す(移植する)ことで血液を作る能力を回復します。

2000年代から採用されてきた治療法で、症状の劇的な改善が多く報告されており、長期間の健康維持が期待されている治療法です。
比較的体力に余裕のある65歳以下の患者で、腎不全などの臓器への影響が少ない場合に適用されますが、神経症状による手足への影響が大きい場合などでは、第一の選択肢として考えられます。
また、事前に後述のサリドマイド等の投薬を行うことにより症状を改善してから自己末梢血幹細胞移植に移行する治療も行われています。千葉大学医学部附属病院ではサリドマイドの移植前治療としての有効性・安全性を示すことを目的に治験(移植前投与試験)が行われています。
(治験登録は2015年2月まで)
サリドマイド治療1950~60年代に睡眠薬や鎮静剤として使用された薬でしたが、妊婦が服用することにより胎児に奇形をもたらす世界的な薬害事件となりました。近年になり、サリドマイドに新しい血管を作りにくくする抗腫瘍効果や、VEGFを抑制する作用が発見され、多発性骨髄腫の治療薬として承認されています。

POEMS症候群の治療でも効果が期待でき、自己末梢血幹細胞移植を採用しない場合の治療方法として選択されます。また、ステロイド(デキサメタゾン)と併用して治療する場合もありますが、血栓症などの副作用には留意が必要とされています。

サリドマイドをPOEMS症候群に適用した場合の有効性・安全性を証明し承認されることを目的として、千葉大学医学部附属病院を中心に、全国12か所の病院でサリドマイドの治験(長期投与試験)が行われています。
(治験登録は2014年2月まで)
レナリドミド
(レブラミド)
サリドマイドと同様に多発性骨髄腫の治療薬として使用されている薬です。
腫瘍細胞の増殖を抑える(自滅させる)ことや、免疫能力を調整することによる腫瘍への効果があり、POEMS症候群での効果も見込まれます。
ボルテゾミブ
(ベルケイド)
プロテアソーム阻害剤ともいわれます。腫瘍細胞が増殖するには、プロテアソームという酵素が関与しているため、この酵素の働きを弱めることで腫瘍細胞を死滅させる働きをする薬です。

POEMS症候群と同様に形質細胞の腫瘍が原因となる多発性骨髄腫の領域でも、上記以外にも様々な治療法、新薬が研究されており、POEMS症候群への応用が期待されています。

いくつかある治療方法のうちどの治療方法を選択するべきか、という点では、以下のような基本的な選択プランが示されており、多くの場合ではこのプランに沿って患者ごとの治療戦略が構成されています。

 

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(出典)2014年7月28日千葉大学大学院医学研究院 神経内科学 映像ライブラリーPOEMS症候群診療の向上を目指してを参照