POEMS症候群とは

2019年1月25日

POEMS症候群(クロウ・深瀬症候群)ってなんですか?

POEMS症候群は、骨髄の中にある形質細胞という細胞が異常に増殖することによって生じる病気です。
正常な状態では形質細胞は免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質を産生し、ウィルスや細菌と言った外敵から体を守る働きをします。
しかし、異常に増殖した形質細胞は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)という異常なタンパク質を産生し、これにより、手足がしびれたり力が入らなくなったりする末梢神経障害(多発性神経炎)、手足の浮腫、胸水・腹水、皮膚が黒くなったり体毛が濃くなるなどの皮膚異常など、全身に様々な症状を引き起こすと考えられています。

POEMSという名称は、この病気の主要な症状である、多発性神経炎(Polyneuropathy)、臓器腫大(Organomegaly)、内分泌障害(Endocrinopathy)、M蛋白血症(M-protein)、皮膚異常(Skin changes)の頭文字からとられたものです。
POEMS症候群は、クロウ・深瀬症候群(Crow-Fukase症候群)、高月病、PEP症候群とも呼ばれる場合がありますが、本サイトでは、原則としてPOEMS症候群と統一して呼んでいます。

POEMS症候群の症状

POEMS症候群は前述の症状をはじめ、多様な症状を呈する病気です。主に次のような症状が知られています。

主な症状影響
多発性神経炎手足の痺れ、震え、麻痺、脱力が発生する症状です。POEMS症候群の患者に多く見られる症状です。
臓器腫大肝臓や脾臓などの臓器が大きくなったり腫れたりします。合わせて「肝脾腫」とも呼ばれます。
内分泌障害男性の胸が膨らむ女性化乳房、血液中の血糖を正常化する働きが弱くなる「耐糖能異常」、甲状腺の機能低下などがおきる場合があります。
皮膚異常体毛が増えたり、濃くなったりする「剛毛」、皮膚の色が赤黒くなる「色素沈着」、皮膚の表面などに現れる血管の固まり(いぼ)のような「血管腫」などがみられることがあります。
浮腫、胸腹水 体の浮腫み(特に両足)胸やお腹に水がたまる症状です。
M蛋白血症 腫瘍化した形質細胞によってM蛋白という物質が作られます。これが血液中に流れ、腎臓などの臓器に付着することで、その臓器の働きを鈍くするなどの影響があります。血液検査、尿検査で調べられますが、POEMS症候群の患者では、M蛋白の量はあまり多くない傾向です。
骨硬化性病変手足、腰などで、骨の組織の生成が多く行われ固くなることがあります。これにより、疼くような痛みを感じるなどの症状が現れることがあります。
乳頭浮腫目の奥、視神経の出口付近に乳頭と呼ばれる部分があります。この部分に浮腫みが生じることで、目の視界がぼやける、ちらつき、複視、見えにくくなることがあります。
血清VEGF高値形質細胞が増えることで、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)という特殊なタンパク質が多く生成されます。新しい血管を作るために作用するものですが、血管内の水分を体内に透過させやすくする性質があり、胸腹水・浮腫をはじめ、POEMS症候群の様々な症状の直接的な原因になっていると考えられています。
腎機能障害腎臓も血液中の老廃物をろ過する糸球体という部分が腫れることで、尿蛋白や血尿がでるなど腎炎・腎機能の低下などの症状が現れることがあります。

先述の通り、形質細胞の異常増殖からVEGFが多く作られ、様々な症状に影響されると考えられています。このため、治療においては、異常を起こした形質細胞に対処することや、異常な形質細胞から産生されるVEGFを抑えることを目標として進められます。主な治療方法については、「POEMS症候群の治療方法」で紹介します。

図1 POEMS症候群の本態と症状の関係

POEMS症候群の診断基準

POEMS症候群の診断は、検査によりどのような症状が現れているか確認し、次の3つに分類されます。

Definite大基準を3項目とも満たしかつ小基準を1項目以上満たす者。
Probable大基準のうち末梢神経障害(多発ニューロパチー)と血清VEGF上昇を満たしかつ小基準を1項目以上満たす者。
Possible大基準のうち末梢神経障害(多発ニューロパチー)を満たしかつ小基準を2項目以上満たす者。
図2 POEMS症候群の診断基準

(出典)厚生労働省 「平成27年1月1日施行の指定難病(新規)」表中、クロウ深瀬症候群の「概要・診断基準等(PDFファイル)」から引用